今年に入って新規に証券取引所に上場する企業が異常ともいえるほど減少している。IPO(新規公開株式)の数は、4月・5月に続いて6月もたったの 1社。7月も1社のみとなる見通しである。これは過去を振り返っても例のないことだ。今、国内の株式市場は歴史的なIPO数不足の状態にあるといっても過言ではないのだ。例年でいえば、6月はIPO数の多い月で、2004年から07年までは毎年6月は10社以上がIPOを行っていた。なぜ今、上場する企業が減っているのだろうか。
その理由を金融情報会社フィスコのIPO担当岡村友哉氏はこう説明する。「株式市場の低迷で上場による資金調達能力が衰えていることに加え、日本版SOX法への対応によるコスト負担増、体制整備への企業のとまどいがあげられます」。景気後退で予算(業績目標)を達成できない上場準備会社も増えているのだ。
また、ある証券ストラテジストは「申請しても取引所に弾かれる」とその実情を明かす。企業の不祥事や業績の下方修正が相次ぎ、投資家が不信感を募らせていることから証券取引所は審査を厳しくしているのだという。
以前は上場準備企業の幹事証券が大手証券会社の場合、証券会社の自社審査さえクリアすれば、取引所のチェックをほとんど受けずにそのまま上場できたが、現在はどの証券会社が幹事証券であろうと、取引所の厳しいチェックで申請が弾かれてしまうのだ。
しかし上場する企業が減れば、市場は活力を失う。エース証券・リサーチ本部次長、河合達憲氏は「米国のナスダック(NASDAQ)のように、入り口よりも、中に入ってから厳しくチェックすべきだ」と指摘する。「例えば、ナスダックの1ドルルール上場廃止基準のように一定の株価を割込んだら上場廃止にするなど、マーケットや投資家からの洗礼によって、上場維持や廃止の基準を導入すれば、逆に活性化に繋がる。ナスダックは現在約4000社が上場し、年間数百社が上場廃止・新規公開で入れ替わる。つまり、マーケットという生簀のなかで常に新鮮な魚が泳いでいる状態といえる。日本のように、疑わしきは上場させないというようなリスクをとらない現状のやり方では地盤沈下の悪循環から抜け出しにくい」と審査を厳しくするだけの国内取引所の処置に警鐘を鳴らしている。
IPOの準備に取りかかるのは、IPO目標年度の3期前あたりから(東証上場の場合)が一般的だ。その準備にはかなりの手間と労力がかかるため、承認が下りずに手続きが振り出しに戻ると、企業にとっても多くの負担になる。審査を厳しくし上場の間口を狭くするだけでは、日本経済に悪影響を与えかねない。